呆丈記

呆れたものがたり

明晰夢芝居~第八幕~未練学園

 最近は学校の夢ばかり見るようになった。

 

青春時代が恋しいのか?懐かしい日々に戻りたいのか? どうやらいずれも違うようだ。

 

 

なぜなら初めて見る最新の新築校舎に誰だか分らない学生たちで、私の知っている汚い青春とは真逆の理想のキャンパスがそこには広がっていたからだ。

 

 

 この学校にはもう数回来ているが、制服を着ている人と普段着の人がいる乱れている。

 

 

私はいつものスラックスにヨレヨレのYシャツで、窓側の前から2列目に座っていた。

 

 

2回目の時も前に同じ学生がいたので、『何を学びなおしに来たか?』をたずねてみた。

 

机に突っ伏して寝ていた前の席の学生服に、思い切って声をかけて見た。

 

 

 めんどくさそうに振り向いた彼は、五分刈りの短い白髪頭に眼鏡をかけた六十代半ばから後半くらいだった。

 

 

『何をしに来たかだって?大体ここのみんなはおおよそ同じよ。』

 

 

めんどくさそうな割には口元が緩みニヤけていたのが印象的だった。

 

言われて気がついたが『ここのみんな』は、主に中高年が多く若い生徒は見当たらない。

 

 

 そんな中、窓の外をみつめる二十代前半の若い女生徒が目に止まった。

傍らには幼稚園入園前と思われる女児も同じく窓の外を見ている。

 

                                                                                                                                                                                             

『あなたはどうしてこの学校に?』

 

 

未成年で妊娠、出産、結婚の末、二十歳の時に離婚するも中卒シングルマザーとしての身に世間の風はあまりにも厳しく金銭面でも苦労していた。

 

そんななか23歳の時勤務先の2歳年上の男性と再婚することに・・・・・・

 

入籍後は一転、男のドメスティックバイオレンスがはじまったらしい。

 

 

再婚して半年足らずで彼女と幼いふたりの人生は短い生涯を終えることとなってしまう。

 

 

彼女と幼き女児の見つめる窓の外には、甲子園で散った高校球児たちが幾重にも歳を重ねてもなお、練習に励んでいた。