異次元からの使者か? 彼らがもたらす非日常は狂気であり、また貴重な場面でもある。
我々の常識が通用しないその世界は、確かに存在している。
彼らの独りごとに耳を傾けてみれば、聞こえてくるもうひとりの声。
長い顔の男
配送の仕事で古い長屋を訪れた。
屋根は赤錆が浮き、壁はひび割れて柱の木材が露出している。
便槽の近くで姉妹らしき幼いふたりの女児が遊んでいる。
便槽からは斜めに天へのびたファンが、色あせて『キュルキュル』と悲鳴のような音を上げて鳴いている。
便槽の真上、ちょうど大人の背丈のちょっと高い位置に30センチ四方くらいの小窓がある。
小窓が突然開いて、中から土気色の顔の長い男が二人の女児をニタニタと笑い見ている。
ピシャ――
小窓が閉まると姉妹は気分を害したのか、妹と思われる方に『公園に行って遊ぼう』と言って自転車を押して行ってしまった。
私は荷物を持って便槽から2件となりの玄関に向かおうとした時だった・・・・
『パパですよ~ぱぱですよ~』
さっきの気持ち悪い男が窓を開けていきなり大声で叫んだ!
土気色の長い顔に伸びきって脂ぎった髪、カッと見開いた眼に鼻の下の口ひげ。
大きく口を開けて舌を上下に動かしている。
私は荷物を落としそうになりながらも黒眼を顔の中心に寄せて唇を真一文字に固く結び、顔全体で円を描き応戦した。
【必殺 カウンター歌舞伎】が効いたのか?男は窓を閉めて以降再び現れることは無かった。
帰りに公園前を通りかかると若い父親と思われる男性が、女児二人とブランコで遊んでいた。
おばあちゃんはチンピラ
深夜の食料品スーパーにたまにいる【金髪リーゼント】のおばあちゃん。
昭和の不良が履いていたダボダボの『ボンタン』ズボンを履いて、セール品が売り切れた事にキレて店員に因縁を付けている。
『見せもんじゃねぇぞ!ゴルァ!!』
野次馬を威嚇するもフラフラしながら両手に袋一杯のラーメンを入れて団地の路地に消えた。
グルメ馬鹿
『ちょっと昼飯でも食べに行こうか?』そう言って出掛けた作者と相方は片道、二百キロ超えの峠を二つ跨いだ街をめざす。
二品目ずつ注文してタヌキの腹になったふたりは、そのまま観光して温泉に宿泊。
翌日はまた同じ店でタヌキになり帰ってくる。
一泊二日で十食くらい喰っている状態。
さあ出発進行!病気も進行!