呆丈記

呆れたものがたり

明晰夢芝居 第2幕

 ひさしぶりに見た明晰夢は不気味であった。意味があるのかないのか?

それはわからない。

私は夢の中でできるだけくわしく覚えようと調べたりした。しかし現実に記憶を持ち帰らせないようにしているのか?目覚めたばかりにもかかわらず、ほとんどの事は頭から消えていた。

 

 

 

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オレンジ色のまち

夕刻時なのかあたりはオレンジ色につつまれている中、私は舗装された道路を散歩していた。空には灰色の雲が浮かんでいる。しばらく歩くと住宅街が見えてきた、しかし人の姿は一切無い。

 

 『これは夢の中なのでは?』と気づき、だんだん車が走っていないことや人がいない状況がこわくなってきた。

家も草も公園の遊具もよく見ると全部が灰色一色なのだ。オレンジの夕日?に灰色一色の住宅街。

 

 はやく現実に戻りたくて走り出した。しばらくすると、耳を塞ぎたくなるほどの【轟音】が聞こえてきた。

山のはるか向こうから、灰色の巨大な何かが轟音を発しながらこちらへと低い高度で向かってくる。

 

それは航空機なのかミサイルなのかわからない。先端が新幹線のような形状でそこまで確認すると、熱い熱風を感じて耳をふさいでしゃがみこんでしまった。

 

数十秒後、大爆発音とともに街に堕ちたのだろうとすぐにわかった。

その後私は煙のように空へと昇った。

 

 

タナカくんの最期

 私は小学校の先生なのか?教科書と出席簿のようなものを抱えて階段を必死に昇っている。先には2~3人の低学年くらいの男児が同じように階段を急いで昇っている。

どうやらこの学校は5階まであるようだ、『はじまっちゃうよ!はやくはやく!』と数段先の児童が振り向きながらせかす。

 

私は3階の踊り場でついにはバテテしまった。

 

 階段を昇っていた一番最後尾の生徒がそれに気づき、戻ってきてくれた。

『もうちょっとだからがんばって!』と励ましてくれる。私も気を取り直して手すりに手をかけた。

昇りかけてその男児くるりと振り向き、奇妙な事を口にしだした。

 

 『そういえば先生の小学校の時にタナカくんっていたでしょ?』

なんで知っているのか驚いたが、続けて彼は私の耳元に小声で

 

『全滅したらしいよ。家族も』とつぶやいた。

 

 彼のはなしでは、タナカくんの隣の家の住民がまず呪われたそうだ。

隣の住民がひとりずつ亡くなり、空き家になると今度はタナカくんの一家にその呪いが降りかかってきたらしい。

 

まずはタナカくんの長女が最初に呪われたようで、次にタナカくんの奥さん、次女と続き順番に亡くなったようだ。死因は長女は聞いてないが奥さんと次女はガンが原因。

 

タナカくん本人はどうなったのかと尋ねたところ、最後に残されたタナカくんは絶望して自殺したらしい。これは隣の住人とまったく同じ最期だったようだ。

ここまで聞いて私は目を覚ました。

 

タナカくんとは特に親しかったわけではない。数人であそぶ際にいるうちの一人に過ぎず、ふたりで遊ぶことはなかった。

奥さんとは15年ほど前に面接に行った役場の待合室に、偶然タナカくんの奥さんも面接に来ており、その際に声をかけられ会話した程度の面識しかない。(初対面なのになんで向うが知っていて声をかけてきたかは謎)

その時の会話で家を新築し長女がいることは聞いていたが、二人目の子供も女の子だったのだろうか?

 

 明晰夢の中の男児は、小学生当時のタナカくんと結婚して所帯をもったタナカくんの両方を知っていた。

他にもいろんな事を聞いたが覚えている事はここまで、男子児童は少しぽっちゃりタイプ短めの頭髪で、灰色のトレーナーに前面に水色で大きな柄が入っていたものを着ていた。残念ながら何回も口にしていた『もうちょっとだからがんばって!』が何を指すのかはわからない。

 

 タナカくんとは連絡もとっていないし、どこに家を建てたのかまではわからない。

しかし奥さんと面接で会った際には『歩いてこれる』と言ってたことから、面接した役場の周囲だったと予測できる。応募7名の中から面接で5名採用する予定だったが、ひとりが列車の乗り間違いで不採用が決まり、面接して不採用になったのはタナカくんの奥さんだけだった。そのため一緒に働くことにはならなかった。(役場が委託している会社のエクセル入力作業)

 

 

あまり気分の良くない内容にも関わらず最後まで閲覧ありがとうございました。