呆丈記

呆れたものがたり

圧倒的不利なたったひとりの大博打

 毎年この季節になると思い出すことがある。

それは高校に入学してまだ三ヶ月足らずで中退したチエコちゃんのことだ。

 

高校に入学早々に母校から『アイドル』が誕生した。

(デビューからうる若き日々は持て囃されテレビに出ていたが、今では名前すら覚えている人がいない泡沫アイドル)

 

彼女がテレビに出るようになり刺激されたのか?高校を中退して東京のダンススクールに行く奴らが続出した。

 

その頃、母校に出入りしていた芸能ダンススクール関係者はアイドル爆誕のどさくさに紛れて入校を煽りまくって勧誘していたのだと思う。

 

本当にイケメンや美人も少なからず居たが、そんな人たちは自らの進路を堅く決めており、どんなに高待遇でのデビューもキッパリ断り他人が作った華やかな未来予想図に見向きもしないものだ。

 

そうなると搾取対象はスクールの月謝代である『阿保』か『ブス』になってゆく。

 

 

冒頭で紹介したチエコちゃんも残念ながらそんな食いもののひとりとなっていった。

 

私はチエコちゃんのことを女子とは思っていなかった節がある。

交際したいような綺麗な娘とは緊張して会話が成り立たないが、どうで良いようなブスとは気兼ねなく話ができた。

 

 

『あたし、とうきょーに行くこと決めたよ』なんて言われた時、『ブスだからやめとけ』って言えば良かったのかね?

普段の会話なら躊躇なく即答できたであろうが・・・・

 

覚悟を決めた時の本気の人間の気迫に『そうかがんばれよ』としか言えなかった。

 

自分でも無理なことはわかっていたはず、今思えば止めて欲しかったのか?それはわからない

 

 

そして火付け役となったアイドルデビューした娘も5年程で芸能界から姿を消した。

 

 

みんながやりたい憧れの夢は安く買い叩かれる。

 

夢を現実に換えて飯が食えるのは、ほんの一握りの天才のみ。

 

誰もが認める天才のみ。

 

 

 

圧倒的で格が違いすぎる代わりのいない天才のみ。