呆丈記

呆れたものがたり

明晰夢芝居~第六幕 殺気店

  夢の中に三度ほど同じ店が出てきている。

 

商店街の裏の丘陵な小山を少し登った所にある、小さな『ホットドック屋』さんである。

 

最初は死んだ母親と買い物の最中だったため、気にはなっていたが記憶に留めておくに過ぎなかった。(明晰夢では無いため自由が利かない)

 

 

小さな三角屋根のログハウス風の店構えは、可愛らしく女性客をターゲットにしているようだった。アメリカの星条旗が幟にプリントされていて、和洋の融合のようなものが店の前に立っていた。

 

デッキには客席もありカフェのような雰囲気もあった。

 

 

 

最初の夢から数日後の二度目に商店街に訪れた際、行ってみたが残念ながら休業日だったらしく、星条旗の幟も立っておらず入口の扉には『closed』のポップな札が下がっていた。(ホットドック屋に行く夢だったが明晰夢では無かった)

 

 

 

それからしばらくの間、夢の中には『ホットドック屋』はおろか、商店街さえ出てはこなかった。

 

 

普通の自由の効かない訳のわからなく、記憶にも残らないような夢が続いた。

夢を見ない日の方が多かったような気がする。

 

 

 

 ホットドック屋のことなんてすでに忘れてしまっていたある日の晩、私は再びこの商店街を訪れていた。

それは最初の夢から半年近くも経過していた。

 

 

 

意気揚揚と小高い丘を駆け上り、風になびく星条旗の幟をめざした。

 

 

まるで一枚の絵画を見ているようだ。白い雲がブルーハワイのソーダに溶けだした生クリームのように混ざり、淡いパステルカラーの青い空を創りだしている。

 

それと対照的に巨大なブロッコリーの上を歩いているような濃い緑の丘。

 

ホールケーキの上のチョコレートの家のような存在感で佇むログハウス。

 

 

 

 

しかし近づくにつれて募る不安と恐怖心・・・・・

どこから湧いて来るのかわからない場違いな『感情』は本能にブレーキを求めていた。

 

 

 

 

それからホットドック屋は現れてはいない。

今まで感じたことの無いような恐怖と不安は何だったのか?

ポップな店構えが放つ狂気の正体とは一体何だったのか?

 

 

夢・たかが夢か・・・・

今ここでこうして振り返り思い起こせることにとりあえずは感謝したい。