呆丈記

呆れたものがたり

ぼくのじてんしゃ

 残暑の暑い昼下がり、急坂の上に住む爺さんから焼酎と交換したじてんしゃで、ホームセンターにお買い物に行った。

 

 

 スーパーのカゴを小さくしたようなものが欲しくて探しに行った。カゴを吟味していると通路の向こうから、大量のカゴを持ったおばちゃんがやってきて棚にカゴを返却した。

 

おばちゃんは自分の返却したカゴを、『コレおすすめ!値段の割にめっちゃいい!』と強くおすすめのようだった。

結局おばちゃんがおススメするのでそのカゴにしたが、おばちゃんの言うとおり結構固くてそれでいて安い!

これはよいかも・・・と思いつつホームセンターを後にした。

 

 

 次に久々にハンバーガーでも買って帰るか、と思いじてんしゃを走らせた。

しかしこれが良くなかった。まっすぐ帰ればよいのにね・・・・

 

 ハンバーガー屋の前の横断歩道で信号待ちをしていた時だった。車側の信号が赤に変わり車がとまる。ペダルに体重をのせて踏み出そうとした時だった。

一番前の車の窓が開き、『おい!会社に寄れ』

 

 

それは会社の幹部の声だった。週明けより隣町の営業所が新しく稼働する。今日はそのための引っ越し作業をしている日だった。

 

 結局そのままじてんしゃは、会社へと走るはめに・・・『適当に手伝う振りをしてブラブラして逃げよう』

 

 

10分ほどいろいろ考えてるうちに見えてきた。会社の前には、机やら棚やらが置いてある。さっきの幹部が玄関から出てきて、『もう荷物はほとんど向こうの営業所に持って行ったんだ』『ハンバーガー買ってきたから中に入れよ』とのことで、てっきり手伝わされると思っていたので拍子抜けした。

 

 

 たまにはいいこともあるもんだね、ハンバーガー買わなくて済んだよ。

でも帳尻合うようになっているんだね。帰る時に乗ってきたじてんしゃがなくなっているんだよ。

さっきここにあった机や棚は、ひょっとして廃棄物だったってのかい?

それによしかけたじてんしゃは・・・・・・・

 

 

 

玄関前にはさっき買ったカゴの手が落ちていた。