呆丈記

呆れたものがたり

【平成】最後のお盆の夜

 軽トラックの荷台をかたずけていたら、どこからともなく楽しそうな団らんのこえが聞こえてくる。

古い市営住宅の網戸の内側にはしあわせが溢れていた。

食卓を囲む男女4~5人のこどもたち、手には水色、ピンクのプラスチックの茶碗と箸が握られている。

 

 

母親と思われる女性が大皿に山盛りのおかずを食卓の真ん中に置くと一斉に伸びる箸、とともにはじまる『いただきます!』

 

 

『肉取りすぎだ!』『とられた』だの大声が響く、思うようにおかずが箸でつかめない幼児が泣き出す。

見かねた姉が幼児の口に、おかずを入れると泣きやむ。

 

 

 

 ベランダの外には、父親の物と思われるツナギとヘルメットが干してある。

ころがっている昼間の土あそびのシャベルやバケツ、晴れの日でもいつも履いている小さな長靴、草しか入っていない虫かご・・・・

 

 

 

 平成30年8月16日  【平成】の最後のお盆にもまだ昭和はあった。