呆丈記

呆れたものがたり

今週のお題「傘」

今週のお題「傘」

 

 私は青いビニール傘が大好きで、中学校くらいの時から使用していました。

それは大人になろうと変わる事はありませんでした。(傘だけではないですが)

 

 

 ある雨の日、会社で私の青いビニール傘が無くなりました。

 

 

 普通の透明のビニール傘なら’『間違えて持って行ってしまった』とか『会社の共用品』とか勘違いされてしまいそうですが、青いビニール傘は私だけでした。

 

 

会社の建物の中には他に『委託会社』が入っており、テーブルを挟んで反対側の同じ事務所内でも他の会社の社員が働いていました。

 

 

特に間仕切りも無く、その会社の社員と入り乱れていました。

トイレも下駄箱もロッカー更衣室もその会社と共用しておりました。

 

 

そしてある雨の日に、その会社の太った女性従業員が私の青いビニール傘を差して駐車場へ向うのを目撃し追いかけました。

 

 

傘を間違っていないかを訊ねると、その太った女性従業員は【証拠】と称して自分の車のリアゲートを開けて、たくさんの同じ傘を見せて。

 

 

『あたしはこの青いビニール傘が好きで使っているの』

 

 

と強気で言い放つと颯爽と車を走らせ駐車場をあとにした。

 

 

私は異常に点滅速度の速い彼女の車の左ウィンカーとリアワイパーを見つめながら、あの傘は今まで無くなった自分の傘なのか、それとも今回たまたま私の傘を間違えて差していっただけなのか混乱しました。

 

 

 

 

 翌日も天候はあいにくの雨、昨日の事もあってかさらに気分は重い。

 

 

 

傘が無いので当時母親が緑色の葉っぱが付いた自分の傘を貸してくれました。

とても大きく肩まですっぽり入り濡れません。

 

 

しかし昨日の事があったにもかかわらず、借り物のその傘をいつもの会社の傘立てに立てたずぼらな自分がいたのです。

 

 

 

ご想像通り、退社時には借りた傘が忽然と姿を消したのです。

 

 

買ったばかりで少々値が張ったたため、母親は激怒!まぁ二日続けてなので当然です。

 

 

 

それからしばらく雨は降らず、傘の事も忘れかけた仕事帰りの事。

 

 

 

会社の玄関前に見覚えのある銀色のカローラランクスが停まっていました。

それはあの青いビニール傘が好きだと豪語していた太った委託会社の女性従業員の車でした。

 

 

玄関からコーラの箱を持って出てきた彼女がリアゲートを開けると、そこには母親から借りた『葉っぱ柄が付いた傘』がありました。

 

 

それを見た私はカッとなってしまい、つい『この泥棒野郎!』とキレてしまいました。

 

 

いきなり泥棒扱いされた彼女の方も憤慨し言い争いになってしまい、『警察に通報する』と言って電話しました。

 

 

まもなくしてパトカーがやってきて、興奮気味に『泥棒扱いされた』と大声で訴えかけましたが、警察は状況的に私が盗難品と疑いのある品を見つけたのに、なぜか被疑者である彼女が電話をかけたのか不思議そうでした。

 

 

もう一人のお巡りさんが『でもこれここに名前書いてあるよ』と言い出した途端、彼女の顔は豹変した。

 

 

名前は傘の柄の方ではなく、先っぽの石突きの方に書かれていました。

 

 

『傘を返してくれればそれでよい』とその場は治まりましたが、彼女は退職のお土産にもらったコーラを車に積み込むところだったらしく、事件の真相が迷宮入りする分岐点にたまたま私がいて偶然が重なったようです。

 

 

傘だけではなく、自転車もなぜか気軽に盗まれる典型的なものです。

 

 

いずれも所有者の手から離れて単独で置いてあり持って行きやすいという共通点がありますね。