呆丈記

呆れたものがたり

嫌売鬼

 千客万来、商売繁盛でよろこぶのは、親玉だけである。あらゆる芸をこなしても、もらえる餌はいつも一定量ならば動物もやらなくなるのだろうか?

 

がんばることが仕事では無く、成果を出すことは当たり前のこと・・・・・

きょうも縁の下の力持ちたちは、誰からも評価されることなく人知れず散ってゆく。

  

 

今日は高速道路のサービスエリア内の食堂で遅めの昼飯を食べた。

時刻はまもなく午後2時、食事をとる客もわずかな食堂内。厨房からは談笑の余裕すらうかがえる。

券売機で食券を買いカウンターへと向う。『すみません』声を掛けるが聞こえないのか、中年の女性二人は黙々と流し台を擦っている。

 

 

3回くらい呼ぶと、そのうちのひとりがめんどくさそうな顔をしながらやってきた。

【ザンギカレー】の食券を見るなり、『これはお時間が相当掛かりますがいいんですか?』と言ってきた。

『だいじょうぶです。』と答えると【19】の黄色い番号札を無言でスーッと差し出した。ひだり手には、さっきまで流し台を磨いていた金たわしが握られていてポタポタと泡が垂れていた。

 

 

 閉店間際でもなさそうなのに、終始とても不機嫌でめんどくさそうな店員の勤務実態をあれこれ妄想しながらセルフの煎茶のボタンを押す。

私のうしろに並んでいた眼鏡の男性は、天ぷらそばから山菜そばへの変更をさせられた。

 

 『19番ザンギカレーと20番山菜そばのお客様』

先に受け取りに向かった眼鏡の男性が、カウンター前で立ち止まる。

うしろからついて行った私もギョッとした。

 

 

 

 

 そこにはさっきまで流し台を擦っていた中年女性ふたりが、鬼の形相で仁王立ちしてたたずんでいた。