「私は特別なのよ~!!!!!!」高齢女性の声が寒風を切り裂き響き渡る。
それは怒号とも主張とも受け取れる、嘆きであった。
自分を特別扱いしてほしいとの客の要求に私が【NO】を突き付けるには訳があった。
相当大柄な体格で椅子にふんぞり返ったその高齢女性が放つ大迫力のその嘆きに、
今まであまたの人たちが、屈伏してきた。
それは強引に力で物事を解決させる、いわばガキ大将のようでありながらまた、どこか同情を誘い哀愁を漂わせて感情を揺さぶるものであった。
いつもハイヤー代わりに使われる救急車がオオカミ少年の通報で出動しなくなるように、お盆からこぼれた水は二度と戻ることはないのです。
水はやがて蒸発し、残った盆は『煩』となり煩わしさになります。
【煩】となってしまったこの高齢女性に近所の目は、冬の寒風より冷たい。
いつの日か【煩】が【梵】になることを信じ私は玄関を後にした。