呆丈記

呆れたものがたり

鎖された煙突

 「サンタさんに何お願いするの?」言っていることばの意味が理解ができず、算盤塾の玄関先で固まったのを未だに思い出す。

サンタクロースはもちろん知っていたが、当時の私はそれを本の中や広告で使用されるいわばマスコットやキャラクターのような物としか捉えていなかったからだ。

 

「クリスマスプレゼントだよ!何お願いするの?」とつづけて聞かれ咄嗟にこう返した。「どうせうちの親は買ってくれないよ!」

 

「だからお願いするんだよサンタさんに!変な奴だなぁ」そう言い残すとケンちゃんは迎えに来た車に乗って帰って行った。

一部始終を聞いていたジュンちゃんが、笑いながら「あいつはまだサンタを信じているんだな。いい親なんだろうな」意味が理解できない私に少し驚きながらもおしえてくれた。

 

 

 サンタクロースが子供たちに、プレゼントをくれるという話は当然知っていた。

しかしそれはあくまで、絵本やテレビの中だけのおはなし。

クリスマスにおもちゃや、ゲームが欲しい場合は数ヶ月前から親の言うことをきちんと守りお勉強をして、ほしいアピールをさりげなくして親のボーナス時期まで待ち、機嫌をうかがい遠慮がちに切り出すしか無かった。

 

ジュンちゃんが教えてくれたはなしは、親がこどもの欲しいものを聞いて、サンタクロースに粉して夜中にこっそり欲しかったものを、こどもの枕元に置く文化が存在していることだった。

朝起きて、こどもはサンタさんが本当に自分の希望を叶えてくれたと言って喜ぶらしい。

 

 

 この話をしている時のジュンちゃんを見ていて、ジュンちゃんの家にもサンタが来ないことを悟った。5人兄弟のジュンちゃんの家は団地で、2段ベットがひしめく子供部屋は寝台車のようでちょっと羨ましかった。兄弟は皆、来るはずもないサンタさんに

期待しながら毎年クリスマスを過ごしたそうだ。

 

 

 「うちは仕方ないが、おまえん家はなぜ来ない?」お金もちではないが、決して貧乏ではない我が家にサンタの文化が無いことを、不思議に思ったようだった。

当時の私は、本来普通のこどもが経験するはずの行事は、予防接種のように毎回参加して思い出として残すようにしていた。これは大人になった時にはもう、決して取り返すことのできない大切なことなんだと思っていた。

 

この接種できなかったサンタの予防接種により、クリスマスが嫌いな病を患ってしまい、病は今現在も進行中。

 

 

 こどもがいらっしゃるあなた、仕事が忙しいことを理由に行事や思い出をないがしろにしていませんか?簡易的でもいいので忘れずに接種しましょう。

 

 

さいごに・・・あなたの家の煙突は開いていますか?